防腐、防蟻のための処置と、土台敷き作業の紹介です。
あわせて、防蟻剤(ミケブロック)についても触れておきます。
土台敷きとは
最初に、建築基準法からの引用です。
(土台及び基礎)
第四十二条 構造耐力上主要な部分である柱で最下階の部分に使用するものの下部には、土台を設けなければならない。ただし、・・・中略・・・2 土台は、基礎に緊結しなければならない。ただし、平家建ての建築物で延べ面積が五十平方メートル以内のものについては、この限りでない。
上記のように、土台は基礎に緊結(しっかりと固定)する必要があります。
土台敷きとは、基礎パッキンを敷いた基礎立ち上がりの上に、土台となる角材を、墨にあわせて組んで並べて、アンカーボルトで固定していく工程になります。
土台の寸法や角度がズレたりすると、この後の全体にズレが生じるので、シッカリと合わせていきます。
同時に、レベル(水平)の微調整もしていきます。
土台伏せ、とも呼ばれます。こちらのほうが、なんだかプロっぽい響きですね。
土台サイズは、120mm角(四寸角)もしくは、105mm角(三寸五分角)が用いられるのが一般的です。
通常、柱のサイズに合わせて選ばれますが、耐久性を上げるため土台のみサイズアップをする場合もあるようです。
私の場合は、柱と同様に105mm角材です。
ちなみに、土台のみヒノキで、他はすべてスギを使用しています。
ヒノキ、スギともに防腐、防蟻の効果が高い樹種ですが、ヒノキのほうがより優れているため土台に使用しています。
防腐、防蟻の処置
こちらも、建築基準法の引用からです。
(外壁内部等の防腐措置等)
第四十九条 木造の外壁のうち、鉄網モルタル塗その他軸組が腐りやすい構造である部分の下地には、防水紙その他これに類するものを使用しなければならない。
2 構造耐力上主要な部分である柱、筋かい及び土台のうち、地面から一メートル以内の部分には、有効な防腐措置を講ずるとともに、必要に応じて、しろありその他の虫による害を防ぐための措置を講じなければならない。
このように、構造上主要な部分に、地盤から1M以内の部分で、
防腐、防蟻のための処置は、必ず行う必要があります。
大工さんは、防蟻剤を地盤から1Mまでの土台、柱など主要な部材に噴霧器を使って塗布することが多いようです。
私は、ローラーで防蟻剤を直接木材に塗りました。
1Mと言わず、土台、柱など、構造の主要部分に、全面塗ってます。(梁から上は塗ってません)
使用したのは、こちらです。

ミケブロックという、希釈して使用するタイプの防蟻剤です。
これを選んだ一番の理由は、
「極めて低臭性で、刺激性も殆どない」
と、紹介されていたからです。
実際に使ってみて、臭いはほとんど気にならなかったです。
あと、着色するか選択できる点もよいです。
以前、別の着色済み防蟻剤を使ったことがありますが、刺激臭が強くて、塗った後その場で作業したくありませんでした。
そういうわけで、低臭性を重視しました。
効果については、防腐、防蟻の効用があるそうですが、目に見えて変化がある、というわけではないので、
(もちろん、すぐにシロアリが来たりカビたりするわけではありません)
正直分かりません。
下記メーカーのサイトで紹介されている事柄通りだと思います。
土台敷きをしました
土台、大引きなどの各部名称は、こちらの記事で紹介してます。ご参考に。
防蟻剤を塗りました
防蟻剤(ミケブロック)を計量して希釈したものをつくっておきます。(下写真 ペットボトル)
その防蟻剤をローラーで直接木材に塗りました。

このように水で薄めて使うタイプは、大きな缶入りとかではないので持ち運びが便利です。
また、この防蟻剤(ミケブロック)は50倍に希釈して使用するので、この小さなボトルで大量の液がつくれます。
土台、柱ともに仕口の部分まで全面塗りましたが、原液はまだまだありました。
私は、色を付けていないので、乾いたら元の木材の色に戻ります。
若干、くすんだ色になるかな、という程度です。
施工管理の写真が必要な場合は着色したほうが、よいかもしれません。

ローラーで防蟻剤を塗りながら、土台を配っていきます。(写真上下)

このように材料を先に配って、置いておくことを「まくばる」と言ったりしますが、
たぶん、方言だと思います。
プレカット金物工法の土台継ぎ手
まず、プレカット材には、それぞれに番号が振ってあります。
その番号に合わせて、土台を配り、アンカーボルトの位置に穴を開けます。

アンカーボルトの位置を原寸で測って、土台の表と裏に印をつけます。(上写真)
これは、表と裏から半分ぐらいづつ穴あけするためです。
長い穴を垂直にまっすぐ空けるのは、なかなか難しいので、このほうが、ズレが少なくてキレイに開きます。
穴は20mmのキリ(ドリル刃)を使いドリルで空けました。
直径20mmの穴は、アンカーボルトに対してかなり余裕があります。
アンカーボルトと位置がズレることは、そうないと思います。
大工さんも18~20mmのキリを使うそうです。
ただ、プレカット業者さんによっては、事前にアンカーボルトの穴を空けている場合があるので、そうなるとシビアなアンカーボルト設置が必要になってきます。
穴が開いたら、土台を入れ込んでいきます。

私の場合、プレカット材は基本的に最長4M弱なので、長い部分は土台を繋げて使います。
鎌継ぎ(上写真赤丸 赤四角 部材番号)と呼ばれる継ぎ方です。
途中に段があるので、正確には腰掛け鎌継ぎとなります。
ちなみに、写真右手、上になっている方が男木、反対側が女木と呼ばれます。
金物工法でも、水平方向に継ぎ足すときは鎌継ぎが一般的なようです。

土台を斜めにしないようにしながら、当て木(写真赤丸)を当てて打ち込みます。
ピッタリはまると、一本の木のようになります。
金物工法の接続方法はシンプルです。

それぞれ所定の位置に金物が付いています。(上写真 赤丸)
そこに、切込みを入れて加工している部分(上写真赤四角)をはめ込んでいきます。
ドリフトピンで固定します
ドリフトピンとは、下写真のようなプレカット金物工法専用の金物になります。
メーカーによって色や形状に違いがありますが、いずれもピンのような形になっていると思います。
これを、金具(上写真赤丸)と土台角材の穴の位置をシッカリあわせた状態で打ち込みます。
ドリフトピンを使って、固定していくため金物工法のことをピン工法と呼んだりもします。
(下写真 弾丸のような形のドリフトピン、以下ピン)

ただ、はめ込みが甘く穴の位置がズレた状態で、
無理にピンを打ち込むと割れたりします。(下写真)

以後、穴の位置に注意して打ち込みましたが、もう1カ所割れが入りました。
計2か所です。(以後、割れはありませんでした)
おかげで、アップの写真がありました。
ちなみに、写真で上側のピンはプレカット業者さんが事前に打ち込んでくれてあります。
この上のピンを金物に引っ掛けるようにして合わせます。
下の穴を覗いて位置が合っていたら、ピンを打ち込んでいきます。
ピンの方向は、どちらからでも打ちやすい方からで構いません。
頭を数mm深く入れておくために、上写真のような片側が丸い金槌を使いました。
こんな感じで組んでいきます。

プレカット在来工法の土台継ぎ手
上記した腰掛け鎌継ぎは、大工さんの技法をプレカット加工したものです。
このように、大工さんが行っていた技法を踏襲して、加工したものがプレカット在来工法と呼ばれて、プレカット金物工法と区別されたりします。
私は金物工法でプレカットをお願いしましたが、直角に交わらない部分は金物工法では難しい、
とのことで、斜めに交わる部分は、在来工法で加工することになりました。
奇しくも、両方のプレカット加工を紹介できることになります。

在来工法の角材の接続は、腰掛蟻継ぎ(上写真赤丸)でした。
ちなみに、写真のように角度をつけて木材を繋ぐ場合、仕口と呼びます。
真っすぐ繋ぐ場合は、継ぎ手ですね。
この部分をはめ込んで、上から見たところです。(下写真)

写真赤線のように、ハの字になっている部分がアリの頭に似ているから、蟻継ぎと呼ぶそうです。
かなり想像力を膨らませないとアリには見えませんね。
その近くにある穴は柱を入れるための、ほぞ穴です。
また、蟻継ぎにもう一本つぎ足す、より複雑な仕口もありました。(下写真赤四角)

片方は蟻継ぎですが、もう片方はただはめ込んであるだけです。(上下写真)
加工スペースがなく、無理に加工しても強度が落ちるだけ、なのだと思います。
後ほど金物で補強します。

このように、継ぎ手は鎌継ぎ、仕口は蟻継ぎ、という感じでした。
下写真の少しだけ架けてある大引きが、防蟻剤を塗った直後です。
乾いたら、他の木材と同じ感じになります。

斜めの出隅(コーナー部分)は、現場加工です。(上写真赤丸)
後ほど、飛び出た部分を切り落とします。
土台座金による固定
土台の固定には、最初は角坐金とナット(下写真右)を使うつもりでした。
けれど、後述する不陸調整などによって、アンカーボルトの長さが足りなくなった為、
座金とナットが一体化したタイプの座金(下写真赤四角)を使うことにしました。

この土台座金は、「座掘り機能付き座金」と呼ばれるものです。
平たく広がった座金の部分が、締め上げるのと同時に座彫りしていき、最後は土台とフラットになる、
という便利グッズです。
様々なメーカー製のものがあります。
今回、私が使ったものは下写真の2種類です。

便利な座金なんですが、メーカーそれぞれに締めるためのアタッチメントがあり、相互性がありません。
不便ですね。
なのにどうして2種類も使ったかと申しますと、
同じ様に見えるこの座金、実は微妙に個性がありました。
最初は20mmで穴を空けて、「カネシンのカットスクリュー・Ⅲ」を使っていました。
この座金、平たくなる根元がリブのようになっていて頑丈なつくりになっています。
20mmの穴だと、ここでガッチリと固定されます。
ところが、穴を17mmにして付けようと思ったらリブの部分が当たって入りませんでした。
後から用意した「タナカのスクリュー座金ザボレス」は、リブの部分が薄く座彫り用の刃が付いていて、問題なく付けることができました。

締めてみて思ったんですが、この座金、通常のナットよりガチガチに効きます。
ただ、かなりのパワーが必要で、DIYでよく使われるタイプのインパクトドライバーでは、座彫りするほど締まらないと思います。
写真のインパクトドライバーはマキタTD0220という型で、最大締付けトルク220N・mという高トルクのタイプです。
普段使いにはちょっと重くて、お蔵入りしてましたが、出番がやって来ました。
締め付けのパワーを重視する方には向いているインパクトドライバーだと思います。
こういった作業には、打ってつけです。
ただ、一般的なものと比べると少し大きめで重いです。
アンカーボルト位置の不具合がありました
土台を組みだして、ちょっとしてからビックリする事態になりました。

鎌継ぎ部分の真下にアンカーボルトが、、
「あれ、なんでだろう」
この時まで、自分がアンカーボルトの位置をミスしていることに気付かずに、
ポカンとなってしまいました。
馬鹿ですね。
プレカット業者さんに電話して、事態を説明すると、
「そのまま、アンカーボルトを通して締めれば大丈夫です」
とのこと。
このようなことも、あるのだそうです。

仕方がないので、先に継ぎ手を組んでから小さめの穴(17mm)にして、おさめました。
これ、他にも何カ所かありました。

間柱の位置に重なっているものも、、、(上写真赤丸)
ションボリです。

座金を止めたらこんな感じです。(上写真)
締め上げすぎると、割れてくるので、ある程度締まったら座彫りはせずにおきました。
反省しきりです。
土台天端の調整をしました
基礎天端の高さを測ってみると、高低差が全体で13mmありました。
こちらも、反省しきりです。
調整パッキンを挟んで土台天端のレベル(水平)を出していきました。
調整パッキン(写真右)は、厚さが2mm、3mm、5mm、など厚さ大きさ共に、いろんな種類があります。
写真の輪ゴムが付いたものは、城東テクノ基礎パッキンの1mm厚調整スペーサーです。
レベル誤差が少なければ、これだけで調整できるのでしょうが、おさまりませんでした。

くさび(上写真左)も用意しましたが、使いませんでした。
レーザー墨出し器を使って、高さを見ながら調整していきます。

ちょっと悔しいので、土台レベルはキッチリとだしていきました。
調整スペーサーを挟んでいる様子です。(下写真赤四角)

結構、空いてます。残念です。
土台敷き完了
天端誤差、アンカーボルトの位置ずれ、など、
ガッカリすることがいろいろありました。
反省点については、こちらの記事で触れてます。ご参考に。
ただ、基礎立ち上がりと土台のおさまりは、マズマズでした。
ここは、かなり気になっていたので、うれしいです。
矩がキチンと出てなかったりして、おさまりが悪いと、基礎天端にキチンと乗らずに、ズレた感じになります。

アンカーボルトでシッカリと固定して、全体が水平になっていれば土台敷き完了です。

大引きの下には束を付けますが、これは後回しにすることにします。

おわりに一言
最後まで読んでいただきありがとうございます。
土台敷きは、いろいろと反省点はありましたが、
おさまりがよかったので及第点とすることにします。
気を取り直して、今回のおまけの一言、
もとい、おわりの一言は、
「シロアリ」についてです。
建物によって来る虫としては最も嫌われているであろうシロアリ、
同じく、家で見かけて大騒ぎになるゴキブリ、
この嫌われ者のツートップが近い仲間なのは、よく知られた話です。
ちなみに、さなぎを経て成虫になるアリとは別の仲間です。
シロアリは、女王を中心に、巣の生活を支える職蟻、巣を守るための兵隊としての兵蟻、新しい巣をつくるためのニンフ(後の羽アリ)など職業別に分かれた階層を持つコロニー(集団)で生活する真社会性昆虫です。
そして、このコロニー全体でひとつの生き物であるかのような、不思議な振る舞いをみせる、実に興味深い生き物です。
彼らが木材を食すことができるのは、セルラーゼという酵素で、植物を構成する主成分であるセルロースを分解してエネルギーにすることができるからです。
セルラーゼを自ら作ることができるシロアリと、セルラーゼを持っている微生物を受け継ぐシロアリがいるようですが、
いずれにせよ、世界で最も多く存在する有機物であるセルロースを食べることができる、というワイルドカードのような手札を持っています。
しかし、実際は世界を食べつくすようなことは無く、森の掃除屋さんとしてヒッソリと暮らしています。
国内で多く見られるイエシロアリとヤマトシロアリは、「土壌性シロアリ」と呼ばれて、文字通り地面付近を活動の主体にしているシロアリです。
本来彼らは、森の朽木や倒木を分解して自然のサイクルを豊かにする役目を担っています。
とはいえ、せっかく建てた家が食べられてしまっては、ガッカリです。
そのための、防蟻処理です。
けれども、彼らとは別の外来種であるアメリカカンザイシロアリに代表される「乾材シロアリ」と呼ばれるタイプがいます。
何処からか羽アリが飛んできて、そのまま居ついてしまい、木材を食い荒らすという厄介なシロアリです。
家の全方位からのアタックなので、地面からだけを気にしていたら防ぐことができません。
また、カンザイという名前の通り、乾燥した木材をそのまま食すことができるそうです。
水分を多く含む木材を好む、土壌性シロアリのような感覚では対処できないことになります。
対策としては、ホウ酸処理が有効のようですが、普及しているとは言えない状況だと思います。
上記の建築基準法の防蟻処置は、お察しの通り土壌性シロアリを念頭に置いたものです。
乾材シロアリの被害は場所により限定的で、土壌性シロアリより少ないようですが、より被害が拡大していくようであれば、建築基準法の防蟻に対する規定も変わっていくかもしれません。
また、ヒノキが防蟻に有効というのも、乾材シロアリには、それほど効果がないようです。
樹種により忌避効果はあると思われますが、過信するのは禁物かもしれません。
シロアリは私たちの大先輩で、森の掃除屋さんです。
上手な付き合い方を見つけたいですね。



コメント